計算精度

とある小分子の計算を行っている。

 

B3LYP、M11は小さい基底関数を使ってもそこそこいいエネルギー値を出すが、二重結合との共役を含む場合のポテンシャルエネルギー曲面をうまく再現しないようだ。その点ではM06-2Xは大きな基底関数を使わない限り定量性はないが、曲面の形状でCCSD(T)を再現する。欲しい結果を再現する理論は簡単に選択できそうだが、その根拠を合理的に示すのは難しそう。

 

余談ではあるが、今回の検討で第二周期原子がたった5〜8個の系ですら余程相性のいい理論でない限りCCSD(T)とのエネルギー差(RMSE)が1kcal/mol以上になるので、複雑な分子触媒の計算で1:9の選択性の起源を計算で明らかにしたとかいう記述は疑ってかかるべきだという印象が補強された。ロンドン力やハロゲン結合、水素結合等の微弱な相互作用を見積もる上で最近の理論は頼りになるが、現状の理論レベルで1kcal/mol以内の誤差に対応可能かというと難しいのではなかろうか(巨大分子になると中長距離電子相関の影響が無視できないので骨格自体のエネルギーをうまく見積もれないこともあるし)。