DOSYを用いた溶液中分子量測定

ずいぶん前に読んだ論文。重要だなとは思っていたが、忘れかけていたのでせっかくだしここに備忘録としてまとめておく。
DOSYはよく知られている通り、拡散係数の違いを利用してNMRのスペクトルを分離する手法である。拡散係数は分子量や分子の形状によっておおまかに予測できる値なので、逆にこれで溶液中の分子量を見積もってしまおうという手法。元論文はこれ。

Accurate molecular weight determination of small molecules via DOSY-NMR by using external calibration curves with normalized diffusion coefficients
http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2015/SC/C5SC00670H#!divAbstract

分子量なんて質量分析器で測れば一発やんけと思うかもしれないが、溶液中で作られた弱い相互作用で繋がってる錯体などは質量分析にかけると壊れてしまう(穏やかに気化・イオン化させるとなると、MALDIとかコールドスプレーイオン化法とかもあるけど)。そんなのもしっかり質量決定できれば、反応溶液中の分子構造がしっかり同定できるというメリットがあり、反応機構解析の進展に大きく寄与する。

で、溶液中で凝集している金属化合物というとリチウム化合物などが広く知られているわけで、特に近年(といってもずいぶん前ではあるが)発表されたKnochel-Houser Baseなんてのは興味がもたれる。筆者らはその解析にも本手法を応用している。

Solution Structures of Hauser Base iPr2NMgCl and Turbo-Hauser Base iPr2NMgCl·LiCl in THF and the Influence of LiCl on the Schlenk-Equilibrium
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.6b00345

自分の研究などにもある程度応用可能なんじゃないかと思って気に留めてたんだが、多分質量分析器で十分だわと書いてて気づいた。将来使うかもしれないのでとりあえず覚えておきたい。